オンラインゲームの舞台裏では、ハッカーと同様の技術を駆使した不正行為が横行している。フォートナイト、ヴァロラント、Apex Legendsといった人気ゲームでは、Windowsのカーネルを狙った攻撃によってアンチチートシステムが無力化されるケースが増加している。
最新の研究によると、チート行為を支えるグレーマーケットは急成長を遂げており、数万人のユーザーが毎月高額なチートソフトを購入しているという。さらに、こうしたチートの一部はサイバー攻撃で用いられる技術と類似しており、その影響はゲームの枠を超えて広がっている。
カーネルレベルの脆弱性を突くチートの技術
近年のオンラインゲームにおける不正行為では、Windowsのカーネルに直接干渉する高度な攻撃が増加している。このカーネルはシステム全体を制御する領域であり、通常はアンチウイルスプログラムや高度なセキュリティソフトウェアしかアクセスできない。しかし、チーターはこのカーネルへの侵入に成功することで、ゲーム内の対戦相手の情報を不正に入手することができるのだ。
具体的には、第三者のドライバーを利用して権限を奪取し、アンチチートプログラムの監視を回避する手口が確認されている。 このようなカーネルレベルの不正行為は、単なるゲーム内の不正にとどまらず、サイバー攻撃にも類似する手法が使われる点が特徴的である。マルウェアやランサムウェア攻撃では、同様にカーネルアクセスを利用してセキュリティソフトの無効化を図ることが多い。研究者たちは、こうした攻撃がゲームの世界だけでなく、サイバー空間全体の脅威とも関連していることに警鐘を鳴らしている。
チート市場の拡大と年間数千万ドルの収益
調査によると、オンラインゲームの不正行為に関連する市場は急速に拡大している。約80のグレーマーケットサイトが存在し、これらのサイトは月額制のチートソフトウェアを提供している。その価格はゲームの人気や需要に応じて変動し、低需要のゲームでは月額10ドル程度から、高需要のゲームでは月額240ドルにも達するという。
この市場の規模は驚異的で、月間3万人から17万4千人のユーザーがチートを利用していると見積もられている。市場全体の年間収益は1,280万ドルから7,320万ドルに達する可能性があるとされている。 チートソフトウェアの販売は多くの国で違法とされているが、それでもこの市場が繁栄している背景には、技術的な防御と攻撃のいたちごっこがある。特に、強力なアンチチート対策が施されたゲームほど、高額なチートソフトが販売される傾向が強い。ゲーム企業もチート対策に取り組むが、完全に不正行為を排除することは難しく、いたちごっこの状態が続いている。
最強のアンチチート対策は存在するか?
研究によると、どのオンラインゲームも完全なアンチチートシステムを持っているわけではなく、すべての対策が最終的には破られる可能性があるという。ValorantやFortniteは他のゲームと比較して高度なアンチチート対策を施しているが、それでも不正行為を完全に防ぐことはできていない。一方で、Counter-Strike 2やBattlefield 1はセキュリティが脆弱であり、チートのリスクが特に高いと指摘されている。 これらの事例は、アンチチートの困難さを如実に示している。
セキュリティの強度が上がるとチートソフトの開発コストも上昇し、結果として市場にはより高額なチートツールが出回る。このため、チート対策は費用対効果を考慮した戦略が求められる。研究者たちは、より効果的な対策のためには、既存のアンチチート技術の強化だけでなく、新たな攻撃手法に対応できる柔軟な防御策が必要であると主張している。
サイバー攻撃との共通点が示す新たな脅威
チート行為に使われる手法は、ゲームの世界にとどまらず、サイバー攻撃との共通点が多い。特に、カーネルへの侵入手法はランサムウェアやマルウェアが用いる技術と類似しており、セキュリティ専門家の間でも注目を集めている。研究者たちは、このような高度な不正行為の普及が、サイバー空間全体に新たな脅威をもたらす可能性があると警告している。
サイバーセキュリティの観点からは、ゲームの不正行為を研究することが、Windowsカーネルの脆弱性への理解を深める手がかりとなるとされている。ゲーム企業が取り組むアンチチート対策の技術は、サイバーセキュリティ分野でも応用可能であり、攻撃と防御のバランスを取る上で有益である。今後、こうした研究成果がさらに発展し、ゲーム業界とセキュリティ業界が協力して新たな対策を開発することが期待される。