Ubisoftが手掛けた無料プレイ型シューティングゲーム「XDefiant」が、2025年6月3日にサービス終了を迎えることが明らかになった。期待された「Call of Dutyキラー」としての地位を確立できず、プレイヤー数の減少と収益不足が主要な理由だ。
サンフランシスコと大阪のスタジオでは277人のレイオフが予定され、サンフランシスコ制作スタジオは閉鎖される。XDefiantは2024年5月にリリースされ、初週で800万人以上を獲得する華々しいスタートを切ったが、競合する「Call of Duty: Black Ops 6」の成功が重くのしかかり、同時接続プレイヤー数の維持が困難な状況に陥った。
Ubisoftはコミュニティに謝意を示しつつ、返金対応や運営縮小の計画を発表。サービス終了の背景には、ゲーム市場での競争の厳しさと運営の難しさが浮き彫りとなっている。
XDefiantの短命の背景に潜む構造的な課題
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「XDefiant」はリリース当初、Ubisoftのユニバースを活用した斬新なコンセプトで注目を集めた。しかし、期待された「Call of Dutyキラー」としての地位を築くには至らなかった。初週で800万人以上のプレイヤーを集める勢いを見せたものの、競争の激しい市場環境の中でプレイヤーの興味を持続させることができなかった。
Insider Gamingの報道によれば、サービス終了の背景にはプレイヤーエンゲージメントと収益性の低迷があるという。無料プレイ型タイトルは、プレイヤー数を維持しながらもゲーム内課金で収益を上げるビジネスモデルを採用する。
しかし、「XDefiant」はこのモデルの成功例にはなれなかった。運営期間中、Ubisoftは多くのリソースを投入していたが、プレイヤー基盤の拡大には繋がらなかった。ゲーム内課金が振るわないことは、このビジネスモデルにおける致命的な問題であり、多くの競合他社が同じ課題に直面している。
Ubisoftの運営縮小やスタジオ閉鎖の決定は、業界における持続可能な収益モデルの重要性を改めて浮き彫りにした。この事例は、開発資源と収益期待のバランスをどう保つかという課題を、他のゲーム会社にも突きつけるものとなっている。
Call of Dutyとの競争がもたらした影響と市場の変化
「XDefiant」の失速は、同時期にリリースされた「Call of Duty: Black Ops 6」の成功とも深く関わっている。「BO6」はMicrosoftによるActivision Blizzard買収後初めての大作タイトルであり、Xbox Game Passという魅力的なプラットフォームを活用して市場に圧倒的なインパクトを与えた。
このタイトルは14日間1ドルのトライアルオファーを用意し、プレイヤー数の急増を実現した。この戦略が「XDefiant」のプレイヤー流出を加速させたことは想像に難くない。「Call of Duty」はすでに確立されたブランド力を持つシリーズであり、新規参入者にとって非常に高いハードルとなる。
特に「BO6」はXbox Game Passを活用した革新的なマーケティングにより、既存プレイヤー層だけでなく、新たなユーザー層をも取り込んだ。Ubisoftが「XDefiant」に求めたプレイヤー数の維持は、このような競争環境では容易ではなかったと考えられる。
市場の変化も影響を与えた可能性がある。多くのプレイヤーが単発の課金型タイトルではなく、サブスクリプション型サービスに移行していることは、今後のゲーム開発戦略にも影響を及ぼすだろう。Ubisoftの「XDefiant」の失敗は、こうした市場の動向を的確に読み取ることの重要性を示している。
ゲーム運営と開発チームへの影響
サービス終了に伴い、Ubisoftはサンフランシスコと大阪のスタジオで大規模なレイオフを実施する見込みであり、277名の従業員が職を失う予定だ。サンフランシスコ制作スタジオは閉鎖される一方、ビジネスオフィスは運営を継続するという。この決定は、開発チームにとって厳しい現実を突きつけるものである。
ゲーム開発における人材削減は、プロジェクトの中断だけでなく、業界全体の士気低下や人材流出にも繋がる可能性がある。Ubisoftは声明の中でコミュニティや従業員への感謝を表明しているが、開発者たちが築いてきた努力が十分に報われなかった現実が残る。
こうした運営縮小の事例は、ゲーム業界における長期的な雇用の不安定さを浮き彫りにしている。特に新規IPに投資するリスクが高まる中、ゲーム会社はどのようにして持続可能な雇用環境を築くべきかという課題に直面している。XDefiantの終了は、業界の構造的課題と、それに立ち向かう必要性を強く示唆している。