Riot Gamesは、League of Legends(LoL)やVALORANTの競技シーンにおける契約トラブルを解決するため、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)地域向けに新たな仲裁裁判所を設立した。
この裁判所はスポーツ専門弁護士のMartensが運営し、選手やコーチ、チームが未払いの給与や賞金、契約問題を迅速に解決できるよう支援するものだ。
プログラムは、EMEA地域のLoLおよびVALORANTのTier 1、Tier 2に所属する約1,500名が対象で、申立てには一定の手数料が必要となる。また、法的支援基金も設置されており、アクセス性を向上させる狙いがある。
新設された仲裁裁判所の仕組みと透明性への期待
Riot Gamesが設立した仲裁裁判所は、従来の複雑な法的手続きを簡素化し、選手やチームが容易に契約問題を解決できるように設計されている。この裁判所を運営するのは、スポーツ法の専門家Martensであり、彼は国際的なスポーツ仲裁の経験を持つ。
申立ては書面提出が基本で、通常は聴聞会が開かれないという点が特徴だ。これにより、時間と費用の大幅な削減が図られ、EMEA地域の複数国で異なる法制度による紛争解決の煩雑さが軽減されると期待される。
Martensが採用した「ex aequo et bono」(正義と善意に基づいて)の判断方式は、国家法に縛られることなく「公平」な解決を目指す。例えば、未払いの給与に対する請求では、法的には正確な額の支払いが求められるが、この方式では利息が付与されることもある。
これにより、競技者とチーム双方にとって納得のいく解決が可能となるだろう。ただし、このアプローチが全てのケースで適切かどうかは、今後の利用者からのフィードバックにかかっているといえる。
費用とアクセスの課題 法的支援基金の役割とは
仲裁裁判所を利用するためには、申立人はまず500ユーロから4,000ユーロの管理手数料を支払う必要がある。その後、仲裁人の費用として1,000ユーロから5,000ユーロを両者で負担する。特に、Tier 2の競技者や中小規模のチームにとっては、この費用が負担となる可能性がある。しかし、Riot Gamesは法的支援基金を設けることで、この問題に対処している。
この基金は、申立人が一定の基準を満たす場合に費用を補助するもので、年間の予算は固定されている。つまり、年度内に基金が尽きた場合、翌年まで追加の支援は行われない。
この点については、Esports.netやRiot Gamesの公式発表でも言及されており、選手やコーチにとっての経済的負担を軽減するための措置とされている。一方で、年間予算の制約があるため、競技シーズン中の申立てが急増した場合には、十分な支援が得られないリスクも考えられる。
EMEA地域の競技環境改善とRiot Gamesの狙い
今回の仲裁制度の導入は、EMEA地域の競技環境全体の改善を目的としている。Riot Gamesは、過去に金銭面での紛争に対して直接介入することが困難であった経験から、新たなシステムで透明性と信頼性を確保しようとしている。この仲裁裁判所が機能することで、選手やコーチ、チームは契約の安定性をより確保でき、競技活動に集中できる環境が整うと期待されている。
Riot GamesのEMEA eスポーツ規則・コンプライアンスマネージャーであるValérie Horyna氏は、「このプラットフォームは関係者が簡単にアクセスできるように設計されており、契約トラブルの迅速な解決が期待される」とコメントしている。この新たな取り組みが成功すれば、他地域や他の競技でも類似の制度が導入される可能性もあり、業界全体の標準的なプロセスとして定着する可能性があるだろう。